【阿部定<事件調書全文>命削る性愛の女】を読みました。
「アベサダ」と聞けばああ、あの事件か、好きな男の「局部」をちょん切っていった殺人事件だろう、とご存知の方も多いはず。

命削る性愛の女【阿部定<事件長所全文>命削る性愛の女】を読みました。

事件発生から2日経たずに逮捕。8回にわたる事件の予審調査の訊問のもようを収録しています。1日で読めます。本のまえがきには

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<引用>
男女の恋愛小説を発表してきた流行作家の渡辺淳一氏による新作小説「失楽園」がベストセラーになっている。渡辺氏は「もう一歩つき進んだ愛」を書こうと考えたとき、この阿部定のことが頭に甦ってきたのだという。渡辺氏は調書を通読して、改めて感動したそうだ。

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とのこと。流行作家、という肩書きもナンですが、この本1997年刊行。この奇才がさらに「愛ルケ」を上梓するという(名台詞:おおい!この人を殺したのはこの私だよぉ!)という黒歴史は勘定に入ってません。

さて「アベサダ」です。昭和11年・・なんと2.26事件のあった年ですよ。大雑把に言うと阿部定は職場の上司:石田と不倫関係に。で、石田は女好きだけあって手練手管の床上手。密会していた「満佐喜」(要はラブホテル)で阿部定は石田を絞殺後、局部を切り取って(with a bat and balls)逃走。結局すぐに逮捕されます。

さて、私はこの事件阿部定の恨みによるものと思っていたのですが大きな勘違い。実は阿部定自身によるとは愛人石田が「愛しくて仕方ない」ので殺してしまった、ということなのです。殺意は元々なかった。

愛人石田とと落ち合う前に定は芝居を見物し、刃傷沙汰のシーンをみて自分も石田に同じようにふざけてみようと思い立ち、包丁を購入します。その後、石田と落ち合い包丁でからかってからくだんの「満佐喜」へ。ここでオフザケアイテムの包丁は隠しておきます。殺害前晩2人は「(以前も挑戦したが)首を締めながら関係すると具合がよろしいので」定は腰紐で石田の首を締めるのですが、これが気を取られて締めすぎてしまい石田がたいそう具合を悪くしてしまいます(首と顔がパンパンに腫れた)。これではいったん自宅に帰らざるを得ないな、と言う石田に強く心と体を求める定ですが、具合の悪い&単に楽しみたいだけの石田としては定の話をあまりまともに取り合おうとしません。定は片時も別れることを嫌い、女房のもとにも戻らせたく無い。石田を永遠に自分のものにするためにはここで殺すしかない、と考えことに至ります。「私は石田を殺してしまうとすっかり安心し」自分も死ぬしかないと考えるのですが→パトロンに一言謝らねばと思いだし→でも石田と離れたくない→あ、そういえば包丁あったっけ!

ぎーこぎこぎこ・・・



調書では生い立ちより聡明な記憶にもとづき淡々と問いに答えていますが、当人は造形がよろしかったことに加え裕福かつ見栄っ張りな親に甘やかされた幼少を送ります。が15才でレイプされたあと自身の将来を悲観してより「不良になって」以後放蕩の限りをつくすようになります。その後(やっとこ怒った)父親に娼妓(しょうぎ)として売られてより親子関係はそれなりに続きますが、簡単にいって男に切れ目の無い人生となりまた当人もカラダを満足させるオトコを望んでいたようです。

モテモテだなぁ。あっ、たしかに美人だ。

同一人物?(逮捕直後)

彼女が調書を通してずっと言っているのが「世間が自分を色キチの異常みたいに言うのが不満」だということ。殺害直後「満佐喜」を出た定はパトロンの大宮五郎に会い金を受け取ります。当初は石田を殺し自分も死ぬ気だったが、次第に気分が変わって来てもう少し石田の思い出を楽しみたいと塵紙に包んだ局部を持ち歩いているうちに逮捕にいたります。

阿部定にとってはあくまでも彼女なりの純愛、ということ。もちろん彼女は「石田は死にたくはなかっただろうけれど」ということもちゃんと理解しており、阿部定自身も百戦錬磨。石田の言う甘言をまるまる鵜呑みにしているわけではないのです。

犯行後、逮捕されこの調書をとられている時点では「当初は石田のことを想うのが楽しかったが、1日1日と気持ちが変わって来てこの頃は馬鹿馬鹿しいことをしたと後悔している。やらなければ今頃は大宮先生といっしょになって幸福だった。なので石田を忘れるのに骨折っている。」と淡々と語っています。

模範囚として5年で出所、その後浅草で小料理屋などを営んでいたようですが、調べてみると現在の生存が不明です。



ミステリアス、の一語に尽きるなぁ・・・。
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by jaguarmen_99 | 2010-08-30 10:52 | 世界遺産的マンガ&BOOKS | Comments(4)
Commented by bluegene at 2010-08-30 11:19 x
阿部定といえばジュンイチ先生より『愛のコリーダ』が有名ですね。私は見たことありませんが(笑)

愛してるから殺したのかもしれないし、無意識下では肉体的に自分を支配した男を憎んでたのかもしれないし、いろいろと想像を刺激される事件だったのでしょうね。
Commented by jaguarmen_99 at 2010-09-01 08:40
■bluegeneさま
大島渚の方が有名なのかー!Σ(゚Д゚;)意外!
> 私は見たことありませんが(笑)
私も今から観たいと思わなかったりいたします。
> いろいろと想像を刺激される事件だったのでしょう
結局真実は当人しか知らぬ、ということなんですよね。相方はサイコパステスト合格者だったので、尋ねてみるとちょっと気持ちはワカルと言ってました。
Commented by yan_two at 2010-09-01 14:56
動画あったんだ!なんというか、還暦過ぎても「女」の匂いがする人ですねえ…物腰とか首の角度とか、無意識なんでしょうが情念を感じます。

「(その人の)何かを持って行きたいって気持ちになるのは当たり前のこと」って所までは判るんですが、そこから「男の、その、物を持つしかないわね」までぴょんと飛べる驚きの跳躍力。髪の毛とかじゃなく男性の象徴を、ってところが彼女の因業を感じさせ、何十年経っても興味の対象になるんでしょうか。


>with a bat and balls
エッ!?バットだけじゃないんだ!?
お父さん、明日もホームランだね!(泣)
Commented by jaguarmen_99 at 2010-09-01 21:15
■yan-twoさま
> お父さん、明日もホームランだね!(泣)
さすが昭和を尊ぶ回顧世代!吉野屋の初代CMを知ってるたぁ、泣かせるじゃねえか!味なことやるマクドナルド、だぜ!
昔野球用品のSSKが[Jack has a bat and two balls]と校庭にトンボをかけながら棒読みで中学生あたりに唄わせるCFがありました。
> ぴょんと飛べる驚きの跳躍力
これ、(サイコパステスト合格の)相方に尋ねると分かるところはある、とのこと。相方も私が死んだらちょっとでいいから食いたい、と以前言ってました。せっかくなので真面目に遺言に残すか?と尋ねたら「今は思わない」と一刀両断。傷つくのはいつも私です。
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