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【荷風になりたい】を読みました。
【荷風になりたい/原作;倉科遼、画;ケン月影】を読みました。

感想

お、汚おお…


こちらでは『オス教養マンガ』とのご紹介でして想定している辺りはワカランでも無いのですが、なんたって作画のケン月影先生が御年80ほど、漢字で漫画と呼ぶにふさわしひであらう。倉科僚氏は元「司敬」ですね。随分昔にゴラクとかに描いてた憶えがあります。

昭和官能系よろしくファンタジーな物語なんか全然無い。そして出て来る女性は色気が凄いが艶がなくて、一律同じ感じ。体型と目つきが全員同じだったりするんですよ。結局金が尽きない女好きの荷風があれこれ舌なめずりをしては囲っては離れ、という繰り返しに。せっかくのビッグコミック=大型出版社なので、もっと話を膨らませてくれても良かったかと思う。

荷風が若い序盤は良いんですが、戦後焼けだされて後ぐらいから何と申しますか、ボケも入って来た前歯の無い老人が我が儘放題という絵面になってきて、この辺から特有の口臭すら生々しく臭って来る気すらしてきます。これが絵面的にも辛い。
悪たれ巨人、銀牙などでおなじみの高橋よしひろ氏はどんな衣類も(故)PL学園野球部か!っていうぐらいスキニーに見せてしまうという個性が有るのですが、御大にかかると何故か全てが対極。ルーズな Talking Heads 時代のデヴィッド・バーンみたいな感じに。カラー頁ではスーツを黄色で塗られちゃったりとかして、バブル臭漂うんだよなぁ。

壮絶な最終回は前歯の無いだらしない感じの老人が2人向き合うという読者から見ると粋なんだか何だか分からない印象にまとめられて、悪いんだけどもう口臭しかしてこなかった。色事と花街にしか興味がない人と私のようなそれらに全く興味が無い人との温度差がマンガというツールを持ってしても角をとってくれないという不思議。ビッグコミック誌上ではほぼ真ん中に有ったんで人気はそれなりに有ったのかな。昨今のエロマンガもちゃんと読んだ事有るんですけれど、私はマンガ温室育ちなんだと思いましたよ。いまどき漢サザエさんみたいな。

さて、私は著名な小説家だという永井荷風を読んだ事がありませんが独り亡くなっていたとか。
こちらの方も仰るように当人本懐の「今で言えば孤独死」にあたるのでしょう。

私の知人は孤独死していました。生前から随分横柄に生きていた人で、気まぐれに優しい面を見せる事も有りましたが、私が接していた部分でもほぼ80%人との関係に優劣をつけることに終始しておられ、既にご近所でもキの字として名を馳せていましたので、人々がこの人を避けて行くのは至極当然のことでした。元のご家族、ご兄弟も距離を取っていたほどに。そのうち持病を抱え、ある日独りで亡くなっていました。私ですら知ったのは1年後です。

彼を知る人達は皆訃報を知って「好きに生きた筈だ。満足だろう。」と評しました。
彼と遠巻きな距離しか無い人たちは「彼は寂しかったんだ、なぜ皆が寄り添わなかったんだ。」と言いました。

でも私は自分が関わらずに「助けてやりなよ。」と無責任に言う人たちが居ることを知っている。私にわかるのは、もし彼を助けようとする人が居たとしても、結局彼はそれを使えるモノとして考えるだけだろうと思う。やっぱり自分中心に生きただろう。で、やっぱりり末期を迎えても、彼には後悔なんてさほどなかったんじゃないかと思う。究極の身勝手とは自分自身にだけ責任を負っていて、他のことは擦り合わせなど関係無く口八丁だからだ。そういう意味で永井荷風はとても身勝手で、しかし自分の人生だけにフォーカスして全うしたのかもしれないね。死を恐れず、常に死を思い今日を派手にしてやろうと思うことは自然な延長線上だと思う。

私はついつい自分だけの人生だと考えきれない。そういう意味では荷風的な生き方には憧れるけれど死がリセットだと思い込めるだろうか。こういう価値観を共有できないとオスの教科書は読み切れないような。

凡人の私としては、こんな年老いてワーワー我が儘ばっかり言いたく無いよう。関わった人にこそ悪く言われたくないよう、と小心ゆえ思ってしまうのですよねぇ。
by jaguarmen_99 | 2017-10-13 22:32 | 世界遺産的マンガ&BOOKS
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