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美味しんぼ102巻(親子和解の回)。
美味しんぼ102巻を読みました。話の核であった主人公:山岡士郎と仲違いしていた実父:海原雄山は和解した、ということでひとまずはひと段落ということになるのでしょう。
既に各所で言われているのでいまさら、なのですがやはり私も気になって仕方ないのが絵の変貌ぶり。マンガ家さんがどんどん上手くなる、というのは歓迎すべきことなのですが、花咲アキラ氏の場合はなぜか老若男女の区別なく恰幅の良い人物にデッサンが変貌。全員肩幅がアイシールド21状態という異例の事態です。
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美味しんぼ102巻(親子和解の回)。_b0046213_13384630.jpg加齢を表現した、と言われればまあ、それもアリなんですけれども、個人的には唯一のヒロインであり主人公:山岡の妻でもある栗田さんの体型が変貌の結果として3児を出産した女性のふっくら体型を繊細なまでに表現してしまっている点に注目。リアル路線というよりどこかしめった肌まで感じそうな生々しさ。たいていのマンガ家さんって絵が上手くなると特に女性を美しく描く方向に進みがちだと思うのですが、美味しんぼにおいては性別も年齢もしがらみのない博愛の世界へと飛び立たれたように思います。登場人物の1人、おチヨさんにいたっては映画館で前に座られると少々難儀しそうな重量級の勢いです。


美味しんぼは連載が長くて矛盾点がけっこう多いという事はよく知られたマンガですが、102巻でも「コーヒーを熱湯で淹れると香りがうせることを解決できないでいた」とか言い出しちゃうんですけど、山岡さん、あんた昔、蚤の市で水出しコーヒーの機械買おうとしたときも同じこと言ってたじゃないか。
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冒頭の画像のように、現在ではすっかり悟った風情の親子ですが、当初はかなりの激昂型の2人。主人公山岡にいたっては各所で食べ物をめぐってはケンカをふっかけるといったならず者状態。見比べても別人です。立ち上がった対面の人物を杖ひとつで押し倒す、海原雄山の人を小馬鹿にした感。小市民の私にはできません。


美味しんぼ102巻(親子和解の回)。_b0046213_1402532.jpg聖人になられる前の栗田さんもヤキモチを焼く、など人間らしいかわいらしさを見せたりしていたのですが、今では子供をタテに正論を押しつけるというちょっと扱いがデリケートな奥様に。このころは首の太さもマンガらしい記号におさまってますね。


結果として主人公:山岡が父雄山を憎む根拠と気持ちはハッキリしているのですが、ではなぜ相対する雄山も延々山岡に対して態度を硬化させているのかという描写はされませんでした。死んだ女房だ息子の嫁だと色々持ち出した割には結果的に山岡の心を理解しないまま和解という名目にズルズルなだれこんでいます。また、栗田さんもなぜそれほどまでに親子は和解せねばならんと叫ぶのか、私個人はぜひこの根幹は知りたいところでしたが描かれずじまいなので、最終的には聖人化した栗田さんが非のうちどころの無いっぽな海原雄山を味方したため、夫:山岡の気持ちをどこまで汲んでいるのかもハッキリしませんでした。


先日NHKの福祉関連のテレビ番組で西原理恵子が「子供のことで自分が壊れそうだ」という視聴者からのメールに

「親子だから愛し合えるというのは妄想です。血のつながりなんてなんの関係もない。(だから無理をする必要はない、とサイバラは言った)。」

と一刀両断。小気味が良いなぁ。私もそう思う。少なくとも私は親とそういう関係だからだ。こんなに長期にわたって連載していたのに、どうも大事なところをはぐらかされたような印象なのはちょっと残念。
by jaguarmen_99 | 2008-08-05 14:21 | 世界遺産的マンガ&BOOKS
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