消費者とは良くも悪くも無責任に個の好みを主張して騒げるのが特権でございますゆえ言わせていただければ、近ごろのマンガはどうも昔のようなトキメキが少ないような気がするのです。
全体に既視感がぬぐえなくて、夢や個性が薄らいでいるように思えるのです。
さて、先日壊れたフードプロセッサーの2代目をあまんぞ先生で探していたところ、食つながりなのか
A9が私にピッタリらしいマンガを推奨してくれました。青天の霹靂。その名も
極道めし
です。お奨めも唐突ならタイトルセンスも突飛です。極道とめし、です。ずば抜けたこのタイトルセンス、
ブレインストーミングでもしないと考えつきそうにありません。強いていえばプラスとプラスを繋いでるのに豆電球がついたよ、といったたぐいの不安とインパクトを与えてくれます。
作者は土山しげる氏。確か「喧嘩ラーメン」というマンガをコンビニの本棚で名前を見かけたことがあるような。このタイトルも常人には発想し難い。この前科、もとい前提があればこそ「極道めし」が生まれるも、むべなるかな。囚人服で天丼をほおばる表紙も考えづらいコラボレーションです。
「極道めし」あらすじ:
全国から極道たちが集まる浪花南刑務所…。毎年、クリスマス・イブの夜に密やかに開かれる男たちの闘いがあった。刑務所では年に一度の楽しみとして、誰もが心待ちにしている“おせち料理”を賭けての“めし”自慢バトル!! 待望のおせち料理は誰の手に?
運良くシャバにいる私たちは「おせち料理をこれほどまでに待ちわびる気持ち」に共感しづらいところですが、大の男が幾人も集まって「勝った者は他のヤツのおせちからスキなオカズを取れるんだもんね」という
小学生みたいな真っ向勝負という設定にはじつに心躍るではありませんか!そう、
私はこういう夢を求めていたんだよ!
↓↓↓↓↓↓↓
・・・・・と、いうわけで買っちゃいました
♥
さて、この「”めし”自慢バトル」のルールは204号室の皆さんで今までに食べたウマイ!というモノを物語にして聞かせ、こいつぁウマそう〜・・・!・・・
ウんマそぉ〜〜〜!!!
ごくっ!とツバを呑み込ませたらポイント進呈
という手はずになっております。
あらくれ集団にあっては随分と判断があいまいなルールではないか、とトラブルが心配になりますが”ごっくん判定”は204号室の重鎮がお一人、審判歴3年の『伍三郎はん』が「もう、トシだからそんなに食えへんしな」という、こざっぱりした理由から進行役に徹しノドを鳴らした囚人が何人いるか、指を折りつつ数えてくださる安心のシステム。ポイントが一番多い方が大晦日から三が日にかけてにふるまわれる各人のおせち料理から一種ずつオカズを取ることができます。
で、ウマイものの話をするのですが、1巻を読む限り表1表4(表表紙、裏表紙)で天丼とオムライスをほおばる主人公らしき人物=御子柴はウマイものの話を語らず紙数を終えてしまいます。正直言うと、彼が主人公なのかも1巻の時点でははっきりしません。
ウマイものの話のついでに各人の罪歴・罪状が明らかになってくるのですが、間違いなく食とは関係の無いことばかりなのでそれだけに食べることにピュアな感情をむきだしの面々は可愛らしささえ感じます。確かにあんな所にいたら他に楽しみ無いだろうなぁ。
ウマイもの話から喧嘩になり懲罰房行きをくらっても、おせちへの情熱は冷めることを知らない。主人公(表紙になってるから、たぶんそう)御子柴は角度が変わると輪郭やフンイキが変わってしまって見分けがつきづらかったりする。これは一番崩れているっぽなシーン。
新しいグルメマンガの登場です!
ところで有名な網走刑務所は年に1度イクラ丼が出ると聞いたことがあるのですが、ホントですかね。チ××に埋めた真珠も収監時に没収されてしまうので、ハブラシの柄を球形になるまで磨いてこれを埋めるのだとか、便秘になったらシャンプーで浣腸するとか、閉鎖空間では独特の文化がたしなまれていることは確かなようですが。