人気ブログランキング | 話題のタグを見る
【暗いブティック通り】を読みました。
【暗いブティック通り】/パトリック・モディアノ著を読みました。著者の名を冠した「モディアノ中毒」という言葉があるそうでこの人の特殊な”まとめ方”に惚れ込んでしまうのだそうな。いえ、私は初めて読んだんですけれども。

なんともいえない読後感です



ただ、後からあれって何?どういうこと?と自問自答を繰り返し、背景をかんがみ、すると巡り巡ってあれまぁ本の主人公と同じ苦い倦怠感に落ち着いた、というか。作中では主人公の気持ちはほぼ語っていませんが、ただ、形容できない重さがあるのです。これ「冬のソナタ」にたいそう影響を与えたとかなんとか。

現在私め「ルパン」の原作のほうとか(子供向けと思いきや猛烈に読み応えがある・・)フランスの作家さんの本を好んで読んでるとこなんですが、舞台設定が似た辺りが多いせいか歴史背景に思いを馳せなくてはならず、私は別にマニアじゃないのでここんち(フランス)が意外に戦争が多い土地だなんて知らないから面倒がかかります。そうだ、ドストエフスキーを読んでる時はあまり背景を知らなくても読めたのに、どうもフランス作家さんの読んでると「こんな感情になるのは仕方のないことだよね?」という前提があってスタンスが違う。空気読めよ、みたいな。これは地域性なのか、それとも小説に全く慣れていない私はやっと小説を読めるようになってきたということか。

この【暗いブティック通り】は読後はわかんね!と放り出したんですが後から気になって調べてみると、正解ははっきりしないけれどこういう事なんじゃないか?という気分になり、それがとても気になり始めたらこれが「モディアノ中毒」なのか?
色々知りたくなり、図書館に著者の別書籍を予約してみました。






結果として記憶を失った主人公:ギイの記憶はある程度は戻るが全てクリアーなわけではない、という現実にありそうな曖昧さで終わります。しかし自分の偽装されたらしい戸籍に婚姻のしるしを見るのです。彼は断片的に思い出しますが、全ては思い出しません。妻は生きているのか否か、という新しい記憶が生まれ行くだけ。

あくまで推察ですが、年代的に考えると彼および彼の周辺は台頭するナチに脅(おびや)かされており、起きたことだけを見れば、彼は本来逃げる必要のないフランス人の妻を巻き込んでしまいます。ギイでありペドロである彼、そして同じように逃げた仲間は電車の車内の緊迫感からも、当時迫害を受け始めたユダヤ系だったと推測できます。

主人公:ギイがあるいは多くを思い出したとしてもやはり、イタリアの「ブティック通り」に行って過去を順番に逆行していかねば結論は出ないのでしょう。そしてギイが記憶を失って10年程度という時間が、どこかすがらせる希望をかいま見せるのです。

調べて、憶測をはべて、その先に希望があるかもという気持ち。
そこで初めてほっとするような気分になるのです。
確かに不思議な作風だと感じます。
by jaguarmen_99 | 2012-02-16 19:10 | 世界遺産的マンガ&BOOKS
<< 由紀さおりを聴いてます。 iTunesが会うたびよそよそしい。 >>