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マンガ読んでます【オークション・ハウス】
昨今は版元の権利の問題なんでしょうか、バブル崩壊後ぐらいまでのマンガはタダ読みできますね。

主人公 リュウ・ソーゲン 柳 宗厳(本名:氏家一郎)は絵画を奪うために自分の両親を殺した犯人を追い求め、美術界の闇と対決するンであッたッ!!なんでこンなにカタカナ多いンだッ!と思ったらやっぱり原作アノ人だった。

オークション・ハウス/原作:小池一夫 画:叶精作


小池一夫氏の家はエレクチオン御殿って呼ばれてるらしいんですけどホントですか?画を担当する叶精作もまた強烈に緻密な画力と個性を持つ作家さんで、wikiによれば小池一夫氏に師事してデビューを果たしているようです。

それでですね、冒頭にも申し上げましたが音楽だマンガだと表現というのは時世の影響を強烈に受けるわけでしてこの作品、ちょうどバブルの残りが漂う1990年から連載が始まっています。

全体の1/3ぐらいまではちゃんと面白いんです。適宜敷居の高そうな絵画のウンチクも混ざって、若い娘を呑みに誘っては格好つけたいバブリーなオジサン達の美しき付け焼き刃となりえたでしょう。この辺りでは主人公リュウは「自分の両親を殺した強盗を探し出すために」美の奉仕者ではなく復讐者として体を張る活劇が多い。この侠気に惚れないほうがおかしいというわけで、復讐者なので人も殺しちゃうンですが、様々な外国人女性の心をうばう哀しみの戦士リュウ。というわけで『美・ゴルゴ』だと思って頂いて間違いありません。結論から言って

バブルの残り香マンガ



マンガ読んでます【オークション・ハウス】_b0046213_19525828.jpgスゲエな!このフィギュア。ここで平成生まれの方にバブル期とはどんなものなの?と説明差し上げたいが私は受け身のフンイキしか分からない。なぜって私はこの連載が始まったぐらいに社会に出たという辺りなのに、世の中がどんなに景気がよくとも私はといえば夜遅くに印刷屋に入稿して人身御供としてたっぷり睨まれたあと終電でトボトボ帰宅、Tシャツ1枚買えない、という足軽のままバブルが終わり、ほぼ恩恵に預かっていないからです。


しかし崩壊寸前の巷は潤沢な金が末端まで行き渡った感。すると成り上がり達の欲望はむき出しになるのです。農協主催の海外ツアー、さらには非公式ながら買春ツアーが連発。そのへんのおっさんが札束握って、鼻息荒く外人女買っちゃる!ですよ。ひっくるめで言われていたエイズ=HIVが蔓延し始めたのもこの頃なのですが、当時はバイセクシャル以上の有名人が HIV からの感染症で次々に他界。同性愛じゃなければエイズにはならない、などのとんちんかんな都市伝説も平然とメディアに飛び交っていたような時代です。青年マンガを支える一般のニーズはむきだしの欲望だったのかも知れません。

はじめこそクールビューティー!なリュウなのですが、それがあまりに格好良過ぎたのか。性描写のほうが人気が出たのでしょうか。なんと3人目の最後の復讐相手を待たずして話がブレッブレ!しかも今までのライバルよりも簡単に死によった!!で、もう女性達となさるのが目的みたいになっていて、フランスから来た女刑事が保護すべき女性に「命を懸合う私たちはリュウと寝て信頼関係を作るのよッ」。一事が万事この調子。じゃあ軍隊とかどーなんの。皆さん進軍エッホエッホ。ケツ掘れワンワン。

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2コマ目、なんのためにあんの??3コマ目で全部はだけた、っていうのじゃダメなの????このあたりで既に『珍ゴルゴ』、美術のそれっぽいウンチクもほぼ出なくなり何でこの人こんなに人殺すことになったんだっけ?とふと我に返ったり。

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手をケガしているリュウ。リュウに惚れた女性達が集まっては嫉妬に狂って喧嘩をするという「何をしても許される」らしい宴。リュウの首をスパッとやる人も出そうなんですが、女性たちは死なない限りはリュウに忠義を尽くします。生きてるだけでも使途ぐらいの人数いるんですけども。そして女性達は嫉妬深い、でもリュウはほぼ傷つけないという小池一夫のマンガに良く出て来る、古い姐さんタイプのみです。

結論として結局…性マンガとして終わりました。最後はロリに手を出した、という辺りで。そして読み終わったとき、私はバブル末期の足軽時代に乱立したショットバーの風景を思い出しました。奢ってもらったんです。そしてその方にお通しのピスタチオを見て私に言ったんです。

ピスタチオ5粒以上食ったら鼻血出るよ?!


「本当ですかね?」私は笑ってそれ以上食べた。鼻血は出なかった。彼は5粒で止めた。頑なに拒んだ。そこまで固辞するもんなの?とドン引きするぐらい。どうも彼は上京したときに先輩に言われたらしい。そのまま信じ込んでいるらしく、そしてちゃんと守っている。目の前で私が食べてみせても決して納得してくれない。この人は上京して20年だと言っていた。私にはそれが正直、田舎の実直な性質を持つ人が何も疑いもせずフワフワとした伝説や噂を真に受けているように見えた。

私は一時期専門学校に通った。東京生まれの私には周囲9.5割が地方人だという事実がたいそうな驚きだった。それは東京の縮図であって、私がモノを知らなかっただけなのだ。いま地方暮らしをしていると、東京にはモノも情報も溢れていて使い捨てで、おそろしい勢いで流れて行く。

けれど都会には夢がたくさんある。前述の人はいまからしたら間抜けなのかも知れないけれど、そういういびつさをきちんと飲み込んで薄めてくれるのが都会なのだ。田舎と都会どちらが優しいと訊かれたら、マイノリティの私は間違いなく都会と答えられる。

あの頃バブルに踊って奢ってくれた人たち。懸命に情報誌を読んでいた人たち。当時の私はあれが現実だと思っていたけれど、本当は雲のごとしのコンテンツだったのだとも思う。当時出会った人たちはどうだったんだろう?このマンガを熱烈愛していた方々はどうだったんだろう??

アレってメジャー系の『漫画エロトピア』だったよな、と言える人居るだろうか。平成の今だったらレディコミ連載がぴったりではないかと思うんだな。面白い序盤は人気出なさそうなんだけど。
by jaguarmen_99 | 2017-05-06 21:09 | 世界遺産的マンガ&BOOKS
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